アメリカ大統領選でなぜトランプが勝利できたのか ー日本では報道されないアメリカ人の本音ー Part.1

まず初めに、この記事の趣旨について説明させて頂くと、なぜあそこまで荒唐無稽なドナルド・トランプがこの度の大統領選に勝利できたのかを、彼を支持しているアメリカ人から見た視点などを踏まえて解説していきたいと思います。日本ではアメリカの白人至上主義が台頭した結果や、アメリカの人種差別問題を浮き彫りにしたなどと言われていますが、私自身は事はそう単純ではないと考えております。

念のため予め伝えておきますが、以下の内容は全て、私自身がアメリカで生活をしている中で感じた視点に基づいて書かれています。しかしながら、私の視点を一意見として発信する事で、今回のような社会・政治問題を理解する手助けになればと思い、今回の記事を書かせて頂きました。

 

2016年アメリカの大統領選の概要

それではまず、簡潔にアメリカ大統領選の概要を見ていきたいと思います。今回は共和党からはドナルド・トランプが、民主党からヒラリー・クリントンが立候補し、熾烈な争いを繰り広げました。しかしながら、今回の選挙を史上最低の大統領選と揶揄する人たちが大勢いたことからも分かるように、トランプとヒラリーの両氏ともスキャンダルに塗れた大統領選挙でもありました。

トランプは人種・女性差別的な発言を数多くしたことにより物議を呼び、対するヒラリーは度重なる健康問題や私有サーバーを経由したメール問題が度々取り沙汰されました。選挙開始直前にFBIがヒラリーのメール問題を再び調査開始したことでヒラリーの支持率が下がる一幕もありましたが、アメリカの名だたるメディアの調査上では依然としてヒラリー優勢のまま投票が始まりました。しかし、結果だけを見ればドナルド・トランプの圧勝とまではいかないまでも大勝利で終わりました。


(Retrieved from http://cnn.com/2016/03/05/opinions/clinton-trump-made-for-each-other-opinion-zelizer/)

 

ワシントン州シアトルの人たちの反応

ワシントン州シアトル市は歴史的にリベラル派の人が多く、同性愛や人種差別問題への関心が非常に高い地域です。そのため、差別発言の多いトランプはシアトルの人々から非常に嫌われており、大学内や街中において数多の批難を聞いたことはあれど、好意的な意見を聞いたことは一度もありません。事実、ワシントン州はヒラリーが勝利した州の一つでもあります。

ではドナルド・トランプが勝利した翌日、シアトルの人たちはどのような反応だったのでしょうか。ダウンタウン・シアトルでは早速ドナルド・トランプへの抗議の声を上げている人がおり、Facebookでも落胆の声が多数上がっていました。私の通う大学でも今回の選挙結果にありえないといった声が飛び交う始末でした。それほどシアトルに住む人たちにとって、トランプ氏の勝利は信じられないことだったようです。

 

トランプの差別発言をアメリカ人は受け入れたのか

前置きが長くなりましたが、いよいよ本題に入りたいと思います。
今回の大統領選におけるトランプの暴言の数々を、果たしてトランプの支持者たちは受け入れていたのでしょうか。
こんなことを書くと当たり前じゃないか。彼らはトランプの発言を肯定していたからこそ、トランプを支持していたに決まっていると言われるかもしれません。でも本当にそうでしょうか。

確かにトランプが勝利した後、一部の地域で人種差別を伴う運動や移民排斥運動が活発化しました。このことからも分かる通り、トランプの差別発言を支持していた人も少なからずいると思います。しかしながらそういった地域は元々差別意識の強い、アメリカ中部や南部の地域などに限定されてくると思います。ヒラリーが勝利した多様な人種が混在する州を見てみても、トランプは一定の支持を集めています。

それではシアトルを例にこの問題を考えていきましょう。こちらのSeattle Timesの統計情報によると、シアトル周辺の地域ではヒラリーが73.7%の投票率を得て勝利しましたが、同時にトランプへの投票も21.3%あります。ワシントン州全体で見ると、ヒラリーの支持率は56.2%、トランプの支持率は37.8%となり、その差は更に縮まります。私はこの数字をそこまで大きな数字とは捉えませんでしたが、シアトルという土地柄を考えた場合、5人に1人以上がトランプを支持したという事実に驚く知人は少なからずおりました。実はこれこそが今回の大統領選挙を考える上でのキーとなるのではないかと考えています。


(Retrieved from https://www.google.com/)

 

トランプ支持者への誹謗中傷がトランプの隠れ支持者を増やした

この記事の冒頭で書いた通り、私はこれまでシアトルで生活をしてきた中で、トランプへの批難を聞いたことはあれど、彼への賛美の言葉を聞いたことがありません。それはたまたまそういう環境にいただけと言われてしまえばそれまでですが、トランプが勝利した翌日、シアトル近郊の大学では反トランプ・デモへの参加のため教授が休講にしたり、生徒が学校を休むケースが少なからず発生しました。またクラス内でも差別主義者が大統領になってしまったことへの絶望から、彼への批難が相次ぎました。

実はこれこそがトランプの台頭を許してしまった原因ではないかと私は考えています。

なぜならば、結果だけを見ればクラス内の5人に1人はトランプを支持していた計算になるにも関わらず、ただの一度として彼を肯定する意見を聞いたことがないからです。それもそのはず、仮にトランプを支持しているなどと公の場で言ってしまった場合には、その人自身が中傷の標的になりかねないからです。

実際に私自身、今年の春・夏頃からFacebookのタイムラインにて一部のアメリカ人の友人が鬱陶しくなり、一時的に彼らの投稿を非表示にしていました。それはなぜかというと、「ドナルド・トランプは差別主義者であり、それを支持する人もまた同じく差別主義者である。社会正義(Social Justice)を考えた場合、トランプを支持してはいけない。」といった主張を何度も何度も繰り返し投稿していたからです。

ドナルド・トランプが差別主義者であり、彼の差別的な言動を肯定してはいけないという主張自体は間違ったこととは思いません。しかしながら、トランプを支持する者も同様に差別主義者であると決め付けている人が少なからずいることには正直驚きました。私はこのような発言の自由を許さない空気そのものがトランプの隠れ支持者を増やした原因ではないかと考えています。その結果、この度の大統領選挙ではまともな議論が行われることがないまま終局を迎えてしまったのです。

と長くなってしまったので今回はここまでにしておきたいと思います。これまで見てきたように、今回の大統領選挙ではモラルに焦点が当てられ、アメリカの社会問題を大きく浮き彫りにする形となりました。次回「アメリカ大統領選でなぜトランプが勝利できたのか ー日本では報道されないアメリカ人の本音ー Part.2」では上記の問題を踏まえた上で、なぜトランプが勝利できたのか、その要因について探っていきたいと思います。

 

*2016年11月15日追記
さっそく大学の教室内にこのような張り紙が貼られていました。
この記事内でも言及しましたが、現在シアトル各地で反トランプ運動が活発化しており、街全体がやや穏やかではない雰囲気です。この一連の投稿の最後に改めて書こうとは思っていますが、決まってしまったことに反発するよりも、今何ができるかを考えて動いていくことが大切であると私は考えています。

 

「アメリカ大統領選でなぜトランプが勝利できたのか ー日本では報道されないアメリカ人の本音ー」リンク一覧

Part.1(2016年大統領選挙において議論がまともに行われなかった理由)
Part.2(トランプが支持された理由とヒラリーが支持されなかった理由)
Part.3(選挙戦の焦点であった移民法と大統領令の概要まとめ)
Part.4(アメリカ人が政治の素人であるトランプに投票できた理由とは [近日中に公開予定])
番外編(シアトルにおける反トランプデモ・レポート [近日中に公開予定])

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